不動産を売却した際には、税金の計算のために減価償却と呼ばれる処理を別途することが多いです。
事業者にはなじみがあるものですが、一般の方にはよくわからないことも多いのではないでしょうか。
今回は、不動産の売却にあたって知っておきたい、減価償却の基本や注意点などを解説します。
不動産売却時の減価償却の基本や計算方法とは
減価償却とは、事業における会計処理の中でよく行われる手続きです。
自動車や建物など一定期間にわたって使える資産は、購入価格から毎年少しずつ価値を減らしていきます。
継続的に使える資産ではあっても、年数の経過とともに価値は下がるものだからです。
不動産売却時に減価償却の対象とされるのは、年数の経過とともに価値が下がっていく建物です。
賃貸として使っている事業用の建物のほか、自宅などに使っている居住用の建物も対象とされます。
土地はいくら年数を重ねても品質には影響しないとされ、減価償却は行いません。
減価償却を行うタイミングは、売却後に税金を計算するときです。
売却益を得たかどうかは、売値から不動産の取得費や売却にかかった経費を引いて計算します。
この取得費について、建物の場合は「建物の購入価格‐減価償却費」の計算にて減価償却を行うのです。
減価償却費は、非事業用の不動産では「建物の購入価格×0.9×償却率×経過年数」によって計算します。
償却率は1年あたりに減る価値の割合のことであり、「1÷耐用年数」で計算可能です。
建物はこのような減価償却の処理をするため、築年数を重ねているほど取得費が安く計上され、税金が発生しやすくなります。
不動産売却時の減価償却の注意点とは
先述の減価償却の方法は、定額法と呼ばれるものです。
ほかに定率法と呼ばれる方法があるものの、主流ではなく、要件を満たして届け出もしていない限り使えないのでご注意ください。
次に、定額法で減価償却をする際に欠かせない建物の耐用年数は、物件の構造によって異なります。
さらに、同じ構造の建物でも事業用か居住用かで耐用年数が変わるので、間違えないように慎重にお調べください。
最後に、減価償却をするためには対象の不動産の購入価格が必要ですが、すでにわからなくなっていることも珍しくありません。
その場合は概算取得費といい、売却価格の5%の金額を取得費にできます。
概算取得費を使うと昔の資料などを探さなくてよい反面、本来の購入価格より取得費が安く計上され、税金面で不利になる場合があります。
不動産を購入した当時の資料が残っている方は、できるだけ正確な取得費を調べるとよいでしょう。