不動産売却時に売主が負っていた瑕疵担保責任は、民法改正により契約不適合責任へと現在変わっているものの、契約時期によっては旧制度が今でも適用されます。
売主にとって変わらず注意したいポイントなので、何らかの形で不動産を売る際にはよく確認しておきましょう。
今回は、任意売却時にも瑕疵担保責任が問われるのか、そのほかの注意点とあわせて解説します。
任意売却でも瑕疵担保責任は問われるのか?
瑕疵担保責任は、任意売却時には特約によって免責されるのが基本です。
任意売却をする時点で、経済的な理由により持ち主も住まいの瑕疵を直せないのが一般的だからです。
この任意売却とは、住宅ローンの返済が継続的に困難になった場合に、銀行や保証会社と交渉して、競売ではなく一般の市場で売却する方法のことで、任意売却を実施する時点で売主に経済的余裕はなくなっています。
不動産の売却で得られる資金も原則的に返済へと充てられ、手元には残りません。
これらの事情から売主に物件の修繕は通常難しいので、売却にあたって特約が設けられ、瑕疵担保責任は免除されるのです。
ゆえに、任意売却によって手放した物件で将来瑕疵が見つかっても、売主は通常責任を問われません。
ただし、瑕疵があることを売主が知らなかった場合の話です。
売主が事前に瑕疵の存在を把握していた場合は扱いが異なり、売り方によっては瑕疵担保責任が問われることもあるので、後述する注意点もよくご確認ください。
任意売却時の瑕疵担保責任に関する注意点
売主が事前に把握している瑕疵は、任意売却にあたって買主へ説明が必要です。
もし瑕疵について説明しなかった場合、たとえ免責の特約があっても、民法第572条の規定により瑕疵担保責任が免除されない可能性があります。
また、たとえ知らなかったとしても、あまりに大きな欠陥が住居にあると当事者間の合意の範囲を超えると判断され、瑕疵担保責任が適用される場合もあります。
任意売却前に事前に把握している瑕疵は隠さずに説明すること、あまりに大きな欠陥などがないか調べておくことなどに注意すると良いでしょう。
なお、物件の種類によって不動産売却後の責任の問われやすさが異なり、マンションでは修繕などが比較的求められにくいです。
マンションの場合、土地や建物全体の問題は住人にはあまり責任がないうえ、シロアリ被害なども物件の構造上起こりにくいからです。
戸建ては売主が責任を負う範囲がマンションより広く、建物の傾きや土地にある埋蔵物などについても何らかの対応を求められる場合があります。
任意売却では通常免責されるとはいえ、物件の種類によっては瑕疵の有無や程度をしっかり注意しておくと良いでしょう。